ちょっと調べ物、というか理解を深めなければいけないことがあって。
かといって周辺に聞ける人がいないので、本を積読しては読んでいるのですが
医療用医薬品製造販売業公正取引協議会ってご存知ですか?
医療用医薬品製造販売業公正取引協議会(公取協)は、昭和59年、医療用医薬品の流通適正化推進の一環として景品表示法に基づき公正取引委員会の認定を受けた医療用医薬品製造販売業公正競争規約の運用機関として設立された業界の自主規制のための団体です。
(医療用医薬品製造販売業公正取引協議会ウェブサイトより)
ということで役員は製薬会社の取締役の方が入っていらっしゃいます。
製薬会社といえば薬の開発と、
病院で時々見かけるMR(医薬情報担当者)という職種があります。
周辺企業で著名なのはエムスリー社(医療従事者(医師・歯科医師・薬剤師など)を
対象とした医療ポータルサイト「m3.com」を中心としたサービス展開)でしょうか。
このMRというのは医師に対して
自社の医療用医薬品に関する情報を提供するのがお仕事なのですが、
その中で医師に対する接待というお仕事(?)もありまして、
それが他業界に比べてなんとも激しいと。
例えば土日は医師の所要や自宅パーティ出席、
はたまた引っ越しを手伝ったり、医師の家族の用事を仰せつかったり、
そこまでいかなくても夜の接待や海外渡航の手配を行うだとか、
ゴルフには毎回付き合う(経費は製薬会社持ち)などと、
非常に大変(人によっては役得)というのは伺ったことがあります。
ぼくも家族まで借りだされていた人を見たこともありました。
こう書くと医師が悪そうに見えてきてしまいますが、どっちもどっちなのですね。
この接待の状況にメスを入れるべく、
2012年4月から医療用医薬品製造販売業公正取引協議会が
取り決めを行い接待関連行為の見直しがされました。
平たく言うと今までのような接待は禁止!ということで
-
・説明会等の弁当代の上限を設ける
・情報交換会(パーティ)の飲食費1人当たり単価を決める
・慰労会の飲食費の上限を決める
・講演会・研究会等の会議出席者への飲食の1人当たり単価を決める
・2次会は禁止…
いままでの「濃くて狭い世界」を禁じていますね。
接待が原則禁止になるという話は耳にしていましたが
細かい数字まで自分の目でみたのは初めてでした。
-
・情報交換会(パーティ)
・慰労会の飲食費
・講演会・研究会等の会議出席者への飲食
それぞれ全部1人当たりの単価上限が2万円です。
・・・・世間とまだまだかけ離れていますよね。
製薬企業が多額の飲食コストをかけて、
出入りの病院の医師を囲い込んで(この言い方嫌い)、
自社医療用医薬品の処方を増やす=販売増という構図
がまずありきですので医師を接待漬けにしようという発想も判りますが。
これをSOV(シェア・オブ・ボイス)というそうです。
この言い方は広告用語としての利用の方が有名かもしれませんが、
いわゆる処方箋依頼中心のMR活動で比較的前時代的な手法だとか。
2012年から実施される製薬企業の接待に関する規制。
この規制は今MR活動に励んでいる人たちだけでなく、
営業本部長・支店長・営業所長といった管理職も対象となります。MRができない高額な会食提供は、
MRとドクターに同行してこのクラスの人たちが行っていたのですが、
これも今後できなくなります。
それに医師側にもそれに甘んじて享受してきた構図もあるのでしょう。
また患者からの「心付け」も病院が禁止していても慣行として残っていて、
いまだに手術となれば数十万円を包む話も耳にしたりします。
営業に飲食はつきものでしょう、という意見もあります。
飲食を共にして胸襟を開いていビジネスを進めていく、
という手法もあるのは確かです。
でもね~、単価上限が上記単価は高すぎるでしょう。
ほとんど接待と縁のない世界で過ごしてきた
ぼくからするとちょっと不思議な世界です。
こういうのを受けちゃうと借りもできちゃった気になるし、
何か書類を書くときに顔もちらつくし、気分悪くなりますよね。
かといってそういうのが平気な自分も想像したくないですし。
この本を読んでいると思わず色々書けそうになるのですが、
MRの活動というのは本当に不思議なものですね。
不思議ではないか、自社製品を売り込みたいので
商品名を連発しているところなど他の業界となんら変わりがないようですね。
ウェブサイトすら見てこないMRがいるとか、
医師の経歴・背景を事前に知る必要があるとか、、、
置き換えてみると他の業界の営業の人も
セオリーとして知っておくべきことが多く書いてあります。
或いはこういうことも書いてありました。
こちらが薬に対して質問したときに
「分かりません」「調べてきます」ではちょっと…。そういった人から提供される情報って果たして信じることができるでしょうか。
逆の立場になって想像してみてください。
ビジネスの本質は人と人とのコミュニケーションです。
「嫌いな人から物は買わない」のです。
「商品を売る前に自分を売れ」と言われるのはそのためです。
耳の痛い話ですが、よく聞く話でもあります。
MRというか製薬業界は取り扱う額が他の業界と桁外れに大きいので、
年収なども比較的高額な業界です。
しかし現在は徐々にではありますが、
旧来型のMR活動は減少しウェブを活用したり、
駐車場で暇つぶしをしているMRは淘汰されつつあるそうです。
製薬会社もMR採用を控えたりする面もあるとかないとか(
大量採用の時期が終わったという事でしょうか)
そうはいっても上記のように1人単価2万円というだけでも凄い世界です。
びっくりして(呆れて)思わずエントリーしてしまいました。
自分の財布よりも人が享受している役得のほうがより気になる
という話ですね。
どこの業界も似たような話はあるとは思うのですが、
会社のお金で飲食をするのなら、
信頼関係をつくって折半なりで一緒に出掛けたりする方が、
信頼関係は築けるのじゃないのかなと思うのですが。
そもそも信頼関係がない人とは
折半で飲みにいったりしませんけれどね。
他業界の人が自分の業界に置き換えてみても面白く読めます。
ところで自主規制をかけてから1年、
具体的にどう変化したのですかね。
生々しい話を聞いてみたいものです。
(追記)
MRによる接待の自主規制強化」については、肯定的(「非常によい」「よい」と回答)に受け止めていたのは、医師の約25%に対し、薬剤師とMRは40~50%と認識に差がある。医師では「あまりよいとは思えない」という否定的な意見が多かったのも特徴
(出典:https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/43013/Default.aspx)
このタイトルだけみると「なぁーんだ、医師側は接待したもらいたいんじゃん」と思ってしまいそうなレポートですね。でもよく読んでみると”医師が2129人”となっているのでちょっと信頼するには母集団が微妙かも。診療科別も均等ではないので何か意図があるのかな。
(さらに追記)
ちなみに1998年の帝国データバンクのレポートで
「中小企業における接待の理想と実情」というレポートがありました。
http://www.tdb.co.jp/report/watching/cos02_04.html
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