Small Giants [スモール・ジャイアンツ] 事業拡大以上の価値を見出した14の企業-を読みました

最初「翻訳がちょっと読みづらいかも」と感じたけれど結果的にはピト(付箋)だらけになった。
 

事業を立ち上げるなら、起業家としての仕事は「私の信じるバリュー・プロポーションは、こうだ。私が由来としているものはこういうことだ。これが私の視点だ」と示していくことだ。最初は独白だが、徐々に対話になり、そして本物の会話になっていく。(24P)

本では「事業の魂」という翻訳をしているけれど、言ってみればコアバリューのこと。起業することは誰にでもできるし、もしかしてコア・バリューがなくても収益をあげている会社もあるかもしれない。ただぼくはこういう魂だとかコア・バリューといったものを大切にする会社が好きだったりする。お仕事で事業計画書を作成したり、マーケティングプランめいたことを一緒に策定するときがあるんだけれど、この視点がないと「何をどうすればいいのか」さっぱりわかなくなる。そして「とりあえず売れるようになりたい」と言われると、もうお手上げになる。
 

事業に関してはどうだったか。彼が大失敗したのは、明らかに、利益ではなく売上に主眼を置いていたためだった。採算の取れない一億ドルの会社を作るよりも、収益性の高い1000万ドル規模の会社にしたほうが良かったのではないか。規模ではなく優れた仕事内容で、惜しみないサービスで、そして満足しつつ献身的に働く従業員がいる会社として、地域や業界で評判の高い会社を目指したほうが良かったのではないか。(56P)

選択するなら迷うことなく、こちら側を選択するよ。課題は一億ドルだろうが1000万ドルだろうが、その規模に到達するためのプロセスなんだよね。

通例のビジネスにとって成長とは目標であり、管理とは自分の手中に維持しておくことを意味する。だが、本書にでてくる企業にとって目標とは、社員に機会を創出し、事業に新たな可能性を切り開くことを意味している。成長とは、そうした大切な目標と、どんな形であれビジネスの存在価値を追求した結果、自然な副産物として発生するものなのである。(88P)

成長搾取とか、やりがい搾取ってありまよね。ベンチャーやスタートアップが採用をするときの常套文句なんですけども。成長が目的になってはいけないし、事業に集中することで結果として成長していたってのは理想だね。成長に拘る人って「成長できる環境ありますか」ってよく聞いてくるんだけど、順序が逆な気がするな。
 

企業の経営者は所有者、つまりは株主によって雇われている立場だ。ゆえに、会社の資源はさらなる株主利益のために使うのが本分である。幹部が政治的あるいは社会的目的のために会社を使うとしたら、実質的に、承認をとらずに株主に負担をかけていることになる。(138P)

会社は誰のものか、って議論一時期流行っていましたよね。ぼくは第三者資本(オーナーシップ企業ではないという意味)が入っているのなら、商法的には会社は株主のものだと考えています。一方「何のために存在しているのか」や「あるいは誰のために存在しているのか」というハナシであればステークホルダーつまり従業員や社会のために存在しているという風に答えていました。
 

商売は商売だし、どんなに優れた企業であってもミスは起こるものだ。ダニー・メイヤーも、このことはよく解っている。彼はかつて、グルメ誌の取材に対して次のように語った。もしリゾットの中に小さなネジが入っていたりしたら、見つけた客は知り合いという知り合いに事件を吹聴するだろう。それは防げない。しかし、『でも、そのレストランがどんな風に対処してくれたと思う?』というセリフが続くようにすることは可能だ」(146P)

この一節を読んだとき思い出したのは糸井重里さんのことば。

 「生産は消費によって完結する」

です。本文ではレストランの話になっていますが、どんな商売でも共通する視点であり、姿勢だと思いませんか。
 
次の文節がこの本で一番惹かれた箇所かも。

企業と従業員と顧客と業者の間での「持ちつ持たれつの感覚」だ。この感覚は三本の柱に支えられている。一番目の柱は「矛盾のない一貫した誠実さ、整合性」だ。企業とは、それが見せる姿、それが訴える内容そのものなのだ、と理解することである。偽りの姿を世界に見せることはできない。二番目の柱は「プロ意識」。企業は、やるといったことをやらなくてはならない。揚げた公約も実行しなくてはならない。そして三番目の柱が、本書がすでに見てきたもの-相互の助け合いに基づいた、直接的で人間的な結びつきである。それが、心理的な絆を創出する効果を持っている。(167P)

なんというか商売の姿勢というかポリシーを表している文章だなぁと。リーガルとモラルとプライドの話がありますけど、まず大切にしたいのはモラルなんです。勿論リーガルを抑えた上でですけどね。モラルがあるがゆえにプライドが保てる、いってみれば矜持ですね。
 
なにより難しいのは「矛盾のない一貫した誠実さ、整合性」を保つこと、判断基準からブレないことです。お金が必要な状態で、だけどそのお金を得るためには自分たちの理念に反することをやらなければいけないときってあります。その時にどうしますか?という話でもあるんです。 
 
そしてこの節。

親密な絆を生み出すのは、たいていの場合は組織トップの人間ではない、ということだ。日々業務にあたるスタッフやマネージャーたちの力なのである。そうした人々が、会社の精神を外の世界へと広めていく。だからこそ、従業員が会社の再優先的存在なのだ(177P)

組織ヒエラルキーに縛られるとこんな視座はでてこないんですよね。そして逆説的にもなりますが、「で、あるがゆえに」経営者は従業員重視の姿勢を取る必要もあります。なぜなら従業員は安心して働ける環境があるからこそ、寄りかかれる判断基準がコア・バリューによって明示されるからこそ、顧客にホスピタリティ溢れるサービスを提供し、「矛盾のない一貫した誠実さ、整合性」を実現することができるんです。
 
誰バス問題もでてた。

良識ある企業を築きたければ、良識ある人材を登用する必要があり、その人々は収入以上のものによって意欲をかき立てられている必要がある。お金が悪いわけではない。誰でも仕事に対して正当な報酬を受けたいと思うものだ。だが、収入だけが働く理由だったとしたら、その人物は違うバスに乗っている(197P) 

これ難しいですよね。何がって乗ってみないとフィットするかどうかわからないんですよ。勿論採用プロセスにおいて双方ともに対等な立場と気持ちで確認はし合うものです。それでもフィットするかどうかはわからない。分かり合うために慎重に選考を進めると自社を選択してもらう前に他社に行ってしまうかもしれない(だったら縁がないと考えることもありですね)。だからこそ、組織は採用に力を入れなきゃダメなんです。
 
戦略的起業文化のことも。

『社員がもともと持つ文化のおかげですね』という人は多いが、それは正確な表現ではない。僕らが求める文化の創出と維持には、しっかりと計画された、価値観を主体とする適切なシステムとプロセスが必要だ」(199P)

ぼくはこの点で失敗しているんですよね。“計画された、価値観を主体とする適切なシステムとプロセス”を創りあげることができずに、判断と行動基準/規範を放任してしまったんです。そりゃあ優しい気持ちいい言葉で溢れているから、人は集まってくるんだけど、そこで終了なんですよね。
 
価値観が共有されれば文化が発生するとはいうものの、現実的には採用プロセスがしっかり効いていないと無理ですし、性善説的な運用になってしまって崩壊します。結局お互いにとって何もいいことはないんですよねぇ。今なら判る。
 

第一に「現実の受け入れ」、第二に「戦略の明確化」、第三に「適材適所」、第四に「マーケティングの導入」、第五に「企業文化の変革」、そして第七に「作業の向上」である。(321P)

会社展望における7つの戦略的賭けに関するページでの一節。順序を別とすれば、要素には同意できた。まぁ書き出せば大概こうなるよね。他に「採用プロセス」「評価制度」といった点も加えておきたい。
 

企業家はそもそも負けず嫌いだ–企業人生のいずれかの時点で、成長を追求したいという強い誘惑を感じるはずだ。結局のところ財務的指標は、最も便利かつ客観的な成功の基準である。成長の最大化はすなわち成功の最大化だ、という思考の落とし穴に陥りやすい。成長は勝利に似ているし、そもそも勝ちたくない人などいないだろう。加えて、「成長ゲーム」にのめり込んでいると、企業構築において最も気づかれにくく、最も過小評価されやすい危険な要因を紛らわせることができる。(344P)

外部資本を受け容れる時点で(この場合ベンチャーキャピタル)エグジットはIPOもしくはバイアウトという二択になるので、成長ゲームに突入するしかないんじゃないのかな。なので資本政策は大切だよって話と、自分が何を成し遂げたいと考えているか、少なくとも「なには選択したくない」と考えているかは大きな分岐点になると思う。
 
この他にもかなりの枚数のピタをつけた。ピタの箇所はつどつど読み直したしするんだけど、いまの自分が心地よいと感じる組織あるいはその志向を改めて認識させてもらえた本だった。

拡大という成長ゲームではなく、自らがもつ本質的価値観に基づく企業経営について、というスタンスについてレポーティングのように書かれた本。ビジネスを育てる、や、スモールビジネス的な心地よい環境を作ることに関心ある人には為にする所が多いと思う。

言うだけや、賛同することは容易いし、共感する人も多い優しい言葉の裏に、いかに持続性を高めるるために、自覚とシステムとプロセスが必要で、かつ価値観をベースとした企業文化が重要かがかなり書かれている。

翻訳がちょっと自分にとって読みにくい箇所があるけど、結果的に付箋だらけになった。

コア・バリュー経営や最愛戦略といったキーワードにピンとくる人には合っていると思う。

 

 

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